痛み・苦痛は、手強い癌の痛みから、心や人間関係や仕事などが絡んだ心身症的な痛みまで、幅広いものがあります。
これらの痛み・苦痛は、それ自体が疾病として、私たち人間をむしばむ性質を持っています。痛みは決して他の病気や傷害の付録ではないのです。
当院は、痛みや苦しみを、“総合的・全人的痛み:Total Pain”として理解する「痛み学」に立っています。ただ体の痛みだけに視野を狭めずに、全人的な視点からの治療をおこなっています。
というのも人間が痛む痛みは、身体の痛み=神経生理学的疼痛要因(Neuro-physiological Pain)に加え、こころの痛み=心理・精神的疼痛(Psycho-mental Pain)、スピリチュアルな痛み= 宗教・スピリチュアルな疼痛要因(Religio-spiritual Pain)*2 、社会的痛み=社会・経済的疼痛要因( Socio-economic Pain)の、4つの痛みの要因が絡んでいるからです。
たとえ治るのが難しい病状であっても、人工的に死を早めること(安楽死)はしません。苦しみを付け加えてしまうことすらある人為的な、いわゆる延命治療にも、当院はきわめて慎重に、患者、家族の皆様と、きめ細かい相談をしながら実施します。個々の治療法などについても、適切な告知の土台の上に、インフォームド・コンセントでご一緒に決めてまいります。
痛みや苦痛をやわらげることによってQOLが上がり、より良い日々の生活を過ごすことができるのです。
ご家族もまた、患者さんと同じ病気そのものを持っていないだけで、ほとんど病気の方と同等の心労など、苦しみを通っています。看病や介護をしておられるご家族も、ご希望によって健康管理や持病の治療などをいたします。
*1 QOLとは、Quality of Lifeの略で、ホスピス医療から医療全体や社会に普及している考えかたです。「生活の質、いのちの質」を意味して、痛み苦しみがなく、平穏に、人が人として有意義に生きるにはどうしたらよいかを追求します。
*2 スピリチュアルな疼痛とは、「死の恐れ」「罪責感や後悔」「過去の人生の意味」「来世観」「救済観」に代表される、人間の根源的な宗教性にかかわる苦悩です。スピリチュアルとは、元来は神学、哲学の用語で、人間生命の超自然的要素にかかわる超越的な人間性の一部のことです。
*2 スピリチュアルな疼痛とは、「死の恐れ」「罪責感や後悔」「過去の人生の意味」「来世観」「救済観」に代表される、人間の根源的な宗教性にかかわる苦悩です。スピリチュアルとは、元来は神学、哲学の用語で、人間生命の超自然的要素にかかわる超越的な人間性の一部のことです。